現代日本の地域交通政策に関する研究
 −文化育む交通を誰もが享受できる豊かな社会の実現に向けて−

可児 紀夫

交通は、現代生活の3基本要素と位置づけられるが、日常生活において誰もが必要と する行為で、交流が文化を高め、豊かな生活をもたらす。交通を交通権として位置づけ、 地域交通を確保することが、公共政策として求められる。しかし、現実には日常生活において、移動困難性が高まっており、そこで、地域における地域交通政策という新たな分野を研究対象とした。
 本論文の目的は、現代日本の地域交通問題は、戦後日本の政府の政策の誤りにより引きおこされ、拡大されてきたのではないかという仮説をもとに、地域において矛盾が生じている現状から戦後日本の地域における交通政策を分析し、地域交通を確保するための枠組みを提起することにある。分析の結果、現代日本における深刻な交通問題である自動車交通事故、環境問題、公共交通の衰退に伴う地域コミュニティの崩壊などは、戦後日本の政府が引きおこした問題と位置づけられた。クルマ社会に対応する交通政策を明確にすることなく、逆に、地方都市においては自家用自動車の利用促進を図る政策を進めてきたためにこの交通問題が拡大してきた。さらに、規制緩和政策により、公共交通産業における労働環境の悪化、輸送の安全確保など問題を広げた。
 そのため、本論文では、戦後からの交通問題に対する交通政策の誤りが問題を拡大し、さらに、規制緩和政策が一層広げたことから、問題の根源であるクルマ社会に対応する総合的な交通政策の確立を主張した。さらに、地域交通政策という新たな公共政策を導き出し、その政策実現には、交通権を保障する総合交通政策の確立、交通基本法の制定、交通基本条例の制定の3つの枠組みを確立することが重要と考える。それを戦後日本の交通政策の変遷と現代日本及び海外の実証的事例をもとに鮮明にした。
 また、地域交通の確保のためには、枠組みとともに、実施主体である地方自治体と地域住民などの協働が必要で、国、都道府県、基礎自治体の行政の役割分担とともに住民や労働組合の役割も明確にした。研究の今後の課題として,クルマ社会からの脱却を世界的視野から検証を深めていくことが今後の課題となる。