技術移転の基礎的概念と国際的・国内的展開に関する研究

川島 光弘

技術移転については、様々なアプローチから研究が進められており、多様な概念が並存している。この状況のもと、本論文では技術移転の基礎的概念を基本構造と移転のプロセスから一体のものとして把握し、同時に広範な技術移転の現象をフォローするために国際技術移転と国内技術移転の両面から具体的な展開を捉える。論文は5章構成とする。

第1章「技術移転概念の基本構造」では、技術移転概念を基本構造において捉える。先行研究から技術移転概念の広がりを捉え、移転の方向性に着目することで1つの立体的な構造(移転ベクトルの3次元構造:@主体間、Aフェーズ間、B用途間)を提示する。

第2章「技術移転の基礎的プロセス」では、移転の対象とプロセスに着目し、技術移転のメカニズムを検討する。技術と技術情報の違いを明確にし、技術移転プロセス(技術移転の3段階:@技術情報への変換、A技術情報の移転、B技術の再現)を明らかにする。

これらの理論研究(技術移転のモデル)は、以下のように実証研究に適用される。

第3章「国際技術移転の具体的展開〜中国における技術導入を事例に〜」では、中国における国際技術移転の新たな展開を実態動向および政策変化から読みとる。さらに、具体的な取り組みとして国際技術商談会を取りあげ、その意義を検討する。これらは主体間移転と捉えられ、それに対する国家管理の問題、促進に向けた取り組みなどが捉えられる。

第4章「国内技術移転の具体的展開T〜わが国における技術・特許流通を中心に〜」で は、国内技術移転について、わが国の状況を特許流通促進施策とTLOを中心に把握し、 今後の促進に向けての課題を検討する。これらには主にフェーズ間移転、用途間移転が含まれる。さらに、促進に向けては技術と技術情報の違いを意識する必要が指摘される。

第5章「国内技術移転の具体的展開U〜中国における技術開発体制改革を中心に〜」では、海外での国内技術移転問題として、中国の「科学技術体制改革」を取りあげる。ここでは改革を市場流通型改革(フェーズ間移転)と企業内開発型改革(技術移転の内部化)の2つに分けて、今後の課題を提示する。

これら実証研究から本論文で提示されるモデルの一定の有効性が示され、今後の一層の精緻化に向けた課題も明らかとなる。また、本論文の技術経営研究への展望も示される。