中国国有大型工業企業論序説
−吉化集団公司の事例を中心に−

楊 秋麗

本論文では,国有大型工業企業である吉化集団公司の事例を用いて,その企業組織および雇用制度の変革に対し,社会主義計画経済期(1949-1978年),改革開放初期(1978-1991年)および社会主義市場経済導入期(1992年以降)の3つの時期に分けて実証的に取り上げた.

その際、国有大型工業企業の変遷(第1章)、国有大型工業企業改革の進展と会社機関の形成(第2章)、国有大型工業企業における雇用の実態―1988年までを中心に―(第3章)、国有大型工業企業における雇用の実態―1990年以降を中心に―(第4章)、国有大型工業企業における住宅制度改革(第5章)という章を設け、以下のことを明らかにした。

企業組織の変革について、1992年まで、吉化集団公司は、旧ソ連の「一長制」および「工業70条」に規定された国有国営企業から、「利改税」や経営請負責任制が導入された国有民営企業まで転換し、さらに、1994年以降の株式会社化により、国有企業システムに大きな変化をもたらした。本論文では、吉化集団公司の傘下にある吉林化学工業株式有限公司の会社機関の形成について、その内部者支配、大株主支配の特徴、および経営権の分権化と集中化との間の動揺を解明し,国有大型工業企業の株式会社化はいまだに過渡期にあり,漸進的な進行であることを証明した.

雇用制度の変革について、本論文では、従来の「固定工制度」を再評価し、さらに、1993年の「全員労働契約制」による解雇、失業の実態を明らかにした。また、1993年の「幹部聘任制」の実施により、従来の厳格な幹部と工員の身分制が廃止され、幹部の立場が保証されなくなったことを証明した。そして、1993年の「双掛」、1995年の「結構賃金制」および2002年の「年薪制」の導入により、吉化集団公司の賃金体系は従業員にインセンティブを与える賃金体系へと変化し、「労働に応じた分配」の原則に照らしたものになったことを解明した。

福利厚生制度の改革について、本論文では、吉化集団公司における医療制度改革および住宅制度改革を取り上げ、企業福利厚生の一環となっていた養老,医療,労災,失業,生育制度を社会保障制度として確立しつつあることを明確にした。