シリケイトダストの創製とダストのダイナミクスに関する実験的研究

上辻 勝也

ヨーロッパ宇宙機構が打ち上げた天文衛星ISOの観測による結晶質シリケイトダストの発見から、ダストに関する見方が一変し、結晶質・非晶質シリケイトダストの変遷や創製の関心が高まっている。この論文では、非晶質SiO、SiO2及びMgシリケイトダストの高温度場での構造変化や結晶化の直接観察に成功し、結晶質・非晶質MgシリケイトダストがMgO、SiO2粒子の衝突・合体による接合成長手法で生成できることを明らかにした。

ガス中蒸発法で生成した非晶質SiO粒子を電子顕微鏡内で直接加熱し、高温度での構造の変化を初めて明らかにした。500〜700℃で、数十nmのサイズの粒子内でSi微結晶が選択的に成長した。これは、SiとSiO2の微結晶からなっているSiO粒子中で、Siが拡散することを始めて見出した現象である。900℃に加熱するとSi微結晶が消え、粒子全体がSiO組成に変化することを見出した。さらにSiO相が、蒸気として昇華するプロセスの直接観察に成功した。粒子の冷却過程で再びSi微結晶が析出する事を見出し、加熱時同様700〜500℃で選択的に成長し、室温での粒子がSiとSiO2の微結晶からなっていることを実証した。また、この実験を通して、SiO組成に変化する温度はバルクの値より約200℃低いことが明らかになり、ナノ粒子では物性が異なっていることを端的に示した。

熱プラズマ中で生成された石英状の非晶質SiO2粒子の観察では、粒子内でのSi微結晶の成長では見られなかったが、粒子間の焼結が盛んになった900℃において、表面拡散や体積拡散の過程でSi微結晶が生成し、SiO粒子での観察同様にSiOへと変化して部分的に蒸発することがわかった。SiO、SiO2の結晶化は非常におこりにくいことがわかった。

ArとO2の混合ガス中でMgOとSiO2粒子を生成する条件を見出し、MgO粒子とSiO2粒子の接合成長によって共に球状の結晶質Mg2SiO4,非晶質Mgシリケイト双方の粒子が生成できることを明らかにした。接合成長後の冷却速度を一桁上げることに成功し、非晶質粒子の生成確率が高くなることを実証した。

このようにつくった非晶質粒子の結晶化プロセスを明らかにした。800℃において粒子表面からMg2SiO4に結晶化することがわかった。更にこの観察のプロセスで、650℃〜750℃において粒子表面でpre-nucleationがおこり、粒子が白いリング状のコントラストを示すことを見出した。この状態はHallenbeck等が赤外スペクトルの変化から提案したstall状態に対応することを明らかにした。