清浄Si及びSiC表面の酸素、Niとの初期反応過程の原子レベルキャラクタリゼーション

星野 靖

高分解能中エネルギーイオン散乱(MEIS)及びSR光励起光電子分光(SR-PES)を結合したSORIS(SOR-light induced photoemission combined with Ion Scattering)を用い、Si及びSiC清浄表面の初期酸化過程とNiとの初期反応過程を原子レベルで研究した。表面近傍の原子配列や組成の深さ分析を定量的に分析することが可能なイオン散乱と化学結合状態やバンド構造の分析が可能な光電子分光をin-situ下で相補的に用いることにより、今まで見えなかった現象を明らかにすることができた。

まず、室温におけるSi(111)-7×7及びSi(001)-2×1表面の初期酸化過程において、酸素の吸着構造を提案した。500℃〜600℃で熱酸化すると、結晶面によって酸化過程が大きく異なった。Si(111)面に関しては、ミクロな領域でも比較的Layer-by-layer酸化が起こっているのに対し、Si(001)面は局所的には非均一・非一様に酸化が進んだ。SiC(0001)-√3×√3表面の室温における初期酸化では、√3×√3-adatomが優先的に酸化されていくことが明らかになった。さらに700℃における酸化では、主にSilicate-likeな構造をとり一様なSiO2膜は形成されなかった。次に述べるSiC(1120)表面については、本実験で初めてその表面構造と表面電子状態が明らかになった。まず、MEISにより(1120)表面には、0.5MLのSi-adlayerが存在していることが分かり、SR-PESによるSi-2p及びC-1sコアレベルスペクトルからもMEISの結果を支持するものが得られた。さらに室温酸化では、Si-Si bond が優先的に酸化されSi-C bondは酸化されにくいことが明らかになった。吸着酸素の絶対量は、10000Lの酸素曝露で0.35ML (1ML=1.49×1015 atoms/cm2)となることから(1120)表面は酸素に対し非常に不活性であることが分かった。一方、500℃以上の酸化において、表面に極薄のStoichiometryなSiO2膜が形成された。MEIS分析からこのSiO2/SiC界面は急峻であることが分かった。また界面のSiC基板中には、最大約2%の圧縮歪が生じていた。最後にNiとSiC表面との初期反応過程については、3元系(Ni, Si, C)の生み出す多彩な表面モーフォロジーと深さプロファイルをMEIS, SR-PES及びAFMにより系統的に明らかにでき、その反応のカイネティクスを知ることができた。

SORISを用いて、表面・界面で起こる様々な物理的・化学的現象を定量的かつ系統的に明らかにしてきた研究の軌跡をここに記す。