Functional Analysis of Proteins Based on Their Interactions

堀部 智久

ヒトノゲム計画終了以来、生命科学分野の研究には急速な進歩が期待されている。しかし、 生命現象を司るタンパク質の詳細な機能発現機構の多くは、依然として不明なままである。本研究では、タンパク質間相互作用に加えて、タンパク質―薬剤間相互作用に注目してタンパク質の機能発現機構の解明を試みた。肝臓は代謝の中枢を占めるため肝毒性は最もよく知られている副作用であるが、これら副作用の詳細な機構も未だわかっていない。そこで、薬剤として肝毒性、腎毒性を示す抗生物質に結合するタンパク質を選択し、薬剤がそれらタンパク質に与える影響を調べた。まず抗生物質を固定化したアフィニティーカラムを作製してウシ肝臓抽出液中の結合タンパク質の検索を試みた。その結果、アミノグリコシド系抗生物質に、protein disulfide isomerase (PDI)が顕著に結合することを見出した。BIACORE を用いた相互作用解析の結果、PDIはアミノグリコシド系抗生物質とKD値が2.06X10-4から1.25X10-3 (M) の範囲で結合す るが、マクロライド系、βラクタム系抗生物質およびリンコマイシンとは相互作用しなかった。また相互作用を示した抗生物質は、PDIのシャペロン活性は阻害するがイソメラーゼ活性は阻害しないことがわかった。また、PDI関連タンパク質であるP5についても同様の結果が得られた。 大腸菌で発現させ生成したP5は、PDIに比べて弱いながらもイソメラーゼ活性、シャペロン活性を有していた。また、チオレドキシン様モチーフの変異の結果から、イソメラーゼ活性を欠いてもシャペロン活性は維持され、イソメラーゼ活性の発現には、最初のモチーフの寄与が大きく、またそれぞれのモチーフ内の最初のシステインが重要であることが判明した。このように、PDIやP5のシャペロン活性の一時的な阻害はタンパク質の構造形成に影響することが予想され、その結果タンパク質の正常な細胞内移行や安定化が影響をうけることが考えられる。これらPDI関連タンパク質の詳細な機能は未だ不明な点が多いので、ウシ肝臓抽出液中のPDI結合タンパク質の検索を行った結果、cyclophilin B (Cyp B) が特異的に結合することが判明した。Cyp BはPDIと相互作用してPDIのシャペロン活性を促進したが、cyclosporin A (CsA) はこの相互作用を強め、Cyp BをCsAとプレインキュベーションしてPDIに加えるとPDIのシャペロン活性は完全に阻害されることがわかった。

本研究で得られた結果は、今後薬剤による副作用や生体内タンパク質の相互作用解析のさらなる機構解明に大いに利用できると期待される。