マイクロクラスターの特異現象に関する 数値的および理論的研究

新山 友暁

本論文では、マイクロクラスターのようなナノスケール系における、2つの異なる特異現象についての研究をおこなった。一つ目はマイクロクラスターにおける非一様温度現象で、もう二つ目は高速拡散現象についての研究である。
第1部では、ミクロカノニカル系のマイクロクラスターの動力学シミュレーションにおいて、数値的に発見した局所温度の非一様分布について調べた。この非一様性の本質的な起源は全並進運動量および全角運動量が力学的保存量となっていることである。これら力学的保存量を取り入れたミクロカノニカル測度をもちいた統計力学的解析によって、局所運動エネルギー温度についての統計平均の表式を導出した。また局所温度によって特徴づけられる局所 Maxwell-Boltzmann 分布についても導出した。これらの結果は数値計算結果に対して極めて良い一致を示した。最後に、この局所運動エネルギー分布の非一様性に対する直観的な解釈を与えた。
第2部では、金属およびアルカリハライドマイクロクラスターにおける特異現象である高速拡散現象について調べた。多体Guptaおよび2体Morseポテンシャルを金属系にCoulomb+Born-Mayerポテンシャルをアルカリハライド系のモデルとした3次元クラスターに対する分子動力学シミュレーションを行った結果、クラスターの成分は融解することなく自発的に混合することがわかった。とくに、アルカリハライドクラスターに対しての研究から、混合の所要時間はArrhenius型温度依存性およびサイズ依存性をもつことがわかった。また、アルカリハライドの拡散機構は金属クラスターにおける皮めくれ機構とまったく異なり、バルク固体でのメカニズムとして知られる空孔拡散機構であることがわかった。