MEMS技術を用いたシリコン熱抵抗型流体慣性センサに関する研究

DAU THANH VAN

本論文は、MEMS (Micro Electro Mechanical Systems) 技術を用い集積形成したシリコン熱抵抗素子を検出機構とした流体慣性センサの研究開発に関するものである。特に流体ジャイロスコープおよび流体加速度センサに着目し、それらの高性能化を目的とした開発研究である。本研究センサの検出原理は半導体シリコンの熱抵抗効果と対流熱伝達に基づいており、慣性力を検知するため一般に必要とされる錘やばねなどの機械要素を全く必要としない。そのため振動や衝撃による破壊など結晶材料の持つ欠点である脆さを克服できるものとして期待できる。シリコン熱抵抗素子の抵抗温度係数が金属抵抗体に比べ格段に高く高感度化が期待できる。本研究はこれらの特長を実証確認するための設計、製造プロセス、性能評価、さらにシリコンの基板平面上に3軸角速度を検出できるデバイス構造を新たに提案するものである。
本論文は以下の10つの章で構成されている。

第1章では単結晶シリコン基板を用いた慣性センサの開発の背景と従来型のデバイス構造と性能を概観する。

第2章では流体ジャイロスコープと流体加速度センサの動作原理について述べる。

第3章ではセンサの設計に関係する流体力学,熱抵抗効果,熱伝達現象について述べる。

第4章では流体ジャイロスコープの構造設計とそのシミュレーションによる性能予測に関して述べる。圧電ポンプよって循環する層流噴流を作り、流体に作用するコリオリ力による流体偏移をシリコン熱抵抗素子の温度差として検出する。従来用いられている金属抵抗体に比べ50倍以上の感度上昇を予測することができた。

第5章では流体加速度センサの構造設計とそのシミュレーションによる性能予測に関して述べる。シリコン抵抗体ヒーターにより自由対流を発生させ、加速度によるその重心の偏移によるシリコン熱抵抗素子の温度差として検出することができる。

第6章ではMEMS技術に基づき開発された製作プロセスについて詳細に述べる。

第7章では製作した流体ジャイロスコープおよび流体加速度センサの感度、クロストーク、非線形性、オフセットの安定性、周波数応答などセンサの性能測定の実験結果を提示する。第4章で行った感度予測どおり金属抵抗体に比べ50倍以上の感度上昇結果を得ることに成功した。

第8章では熱応力の低減およびS/N比の向上を目的とした、シリコン熱抵抗素子の新しい構造設計に関して温度特性との関係で述べる。

第9章ではシリコンの基板平面上に3軸方向の角速度を同時に検出できる全く新しいデバイス構造の提案と性能予測について述べる。

最後に第10章では本研究の結論と今後の課題について述べる。