マイクロラマン分光法を用いた窒化物半導体電子デバイスの特性評価に関する研究

小坂 賢一

本論文は、高出力かつ高周波動作を可能とする次世代半導体デバイスであるAlGaN/GaN HFET (Heterostructure Field Effect Transistor)電子デバイスの更なる高信頼性・高性能化に向けて、高出力動作ゆえの特徴的な問題である耐圧、ゲートのドレイン端に於ける電界集中、セルフヒーティング効果による性能低下などに着目して検討を行った。第一に、AlGaN/GaN HFET電子デバイスのセルフヒーティング効果の解析を行うために、実動作デバイスに対し実験的な温度分布可視化技術が求められる事から、マイクロラマン分光法を用いた温度測定技術の開発を行った。温度をモニタする測定対象としてGaN E2(high)フォノンピークのシフト量から温度を算出することで高い温度精度を可能とする事を示した。また、開発したマイクロラマン分光法装置の概略および注視した点を説明した。その結果、温度測定技術に適したマイクロラマン分光装置として世界最高性能を持つ内容となったことを示した。第二に、高出力化において重要となるAlGaN/GaN HFET電子デバイスの基板依存性・消費電力依存性・Lgd長依存性において2次元温度分布測定およびシミュレーションによる検討を行った。結果、素子温度は基板の熱伝導率および消費電力に大きく依存していることが分かった。Lgd長は素子温度にはほとんど依存しないが電界集中には重要である事がわかった。また、ドレイン側ゲート端に温度集中部があり、電界集中に関係したものである事を示した。以上より高出力・高温動作においては基板の熱伝導率や放熱技術が重要であり、電界耐圧の観点ではLgd長を長くする必要性があることを示した。第三に、さらなる高出力化の指針を示すため、AlGaN/GaN HFET電子デバイスの耐圧限界付近での検証を行った。高電圧下では先に示されたドレイン側ゲート端の温度集中がドレイン側にシフトすることを確認した。その結果、高電圧下では温度集中部と電界集中部が異なり、ゲート電極の直下に存在していた温度集中部が離れることが示された。さらに、電流がゲート下のGaN層を大きく回り込むことにより相互コンダクタンス、ピンチオフ特性の低下を示すことが分かった。次にフィールドプレートを用いた耐圧改善構造の検討を行った。耐圧改善構造では温度集中・電界集中共に緩和され、デバイス特性が改善される理由および利点を示した。高出力化・信頼性の問題はますます重要になると予想され、本論文で得られた成果は今後の性能向上に向けて学術的・産業的分野において知見を与えるものである。