SUS304鋼の十字型試験片を用いた高温多軸クリープ疲労損傷評価

張 聖徳

高温で使用される構造機器,たとえば,高速増殖炉のナトリウム容器等は多軸応力下でのクリープ疲労損傷を受ける.したがって,多軸応力下でのクリープ疲労損傷を適切に評価する方法の開発は,高温構造機器の信頼性や寿命延伸にとって重要な技術課題である.本論文では,高い技術的要求があったが実験技術上の困難からほとんど研究例のなかった,広範な多軸応力の範囲でのクリープ疲労損傷評価法についてSUS304ステンレス鋼を用いて検討した.各章の研究で得られた主要な結論は下記の通りである.

第3章においては,SUS304ステンレス鋼の十字型試験片を用いて多軸応力下で引張・圧縮のクリープ疲労試験を4つのひずみ波形および3つの主ひずみ比の下で実施し,ひずみ波形と主ひずみ比がクリープ疲労寿命に及ぼす影響を検討した.クリープ疲労寿命はひずみ波形と主ひずみ比の影響を受けることを明らかにするとともに,主ひずみ比の大きいものほどクリープ損傷が大きくなることを示した.

第4章では,第3章で得た実験データを用いて,種々の多軸クリープ疲労寿命評価法の予測精度を検討した.有限要素法で十字型試験片の標点部での応力−ひずみ状態を解析し,それらと3種類の等価ひずみおよび3種類の等価応力を用いて線形損傷則の適用性を検討した.多軸応力下でのクリープ疲労の寿命予測にもっとも適している多軸パラメータとしては,き裂開口変位に基づく相当応力ひずみと同相当応力であることが判明した.

第5章においては, SUS304ステンレス鋼の多軸クリープ疲労損傷評価について検討した.き裂や粒界ボイドは主ひずみ比が大きいほど,より早期に発生および成長することを明らかにした.また,多軸応力下では粒界ボイドによる損傷に異方性があることを明らかにし,多軸応力下でのクリープ疲労損傷評価にあたっては,異方性を考慮する必要のあることを明らかにした.