三次元医用ボリューム画像のエントロピーに基づくレジストレーションと統計モデリングに関する研究

徐  睿

本論文は,三次元医用ボリューム画像のエントロピーに基づくレジストレーションと統計モデリングに関する研究成果をまとめたものである.医用画像のレジストレーションは,手術のナビゲーションや時系列データの解析,及び医用画像の融合などにおいて極めて重要な研究課題である.また,臓器の統計モデリングは,医用画像データベースの構築や診断支援などの分野において重要な研究課題である.本研究では,主に以下の四つの研究成果が得られた.

(1)wavelet変換を用いた多重解像度レジストレーション法を提案し,その有効性を示した.従来の医用画像レジストレーションにおいて,相互情報量(MI: Mutual Information)を評価基準として用いられてきたが,空間情報を含んでいないため,高精度なレジストレーションができない.本提案法では,wavelet変換を用いて三次元医用ボリューム画像を多重解像度画像に分解し,低周波成分から相互情報量を計算し,高周波成分からエッジなどの空間情報を計算する.従来の相互情報量に,空間情報を加えることで,高精度なレジストレーションができるようになった.また,多重解像度画像を用いたことで,計算時間も大幅に短縮された.従来の手法に比べて,精度と計算時間の何れも優れている.
(2)従来の相互情報量を用いたレジストレーション法において,オーバーラップ領域が小さい場合,正規化相互情報量(NMI: normalized mutual information)が有効であることが報告されている.これまで,正規化相互情報量が離散的なjoint histogramから計算されているため,微分演算ができない.本研究では,parzan-window法を用いて,joint histogramをカーネル関数で近似し,正規化相互情報量の微分形をはじめて導出した.また,導出した微分関数を用いて,正規化相互情報量に基づく勾配法を開発し,従来の手法より,高速に計算することができた.
(3)MR画像ガイド肝腫瘍凝固治療のため、3次元CTとMR画像の非剛体レジストレーション法を開発した.本手法では,前述の微分可能な正規化相互情報量を評価基準とし,剛体変換に加えて,FFD(Free Form Deformation)モデルを用いた.肝臓のような変形を伴う臓器に対しても高精度なレジストレーションができるようになった.位置合わせ精度はファントムと実際の医用画像の両方で評価された、ファントムで評価した位置あわせ精度は1.86mm±0.47mmで、実際の医用画像で評価した位置あわせ精度は1.45mm±0.27mmであった。肝腫瘍治療には十分な精度である.本手法のMR画像ガイド肝腫瘍凝固治療への実用化が期待される.
(4)三次元ボリュームデータをそのまま統計解析できる,一般化N次元主成分分析法(GND-PCA: Generalized N-dimensional PCA)を開発し,少数なサンプルからもボリュームの統計appearanceモデリングを行う手法を提案した.一方,三次元ボリュームデータを1次元に展開した場合,サンプル数に比べると次元数が非常に大きいため, 従来の1次元PCA法では,膨大な計算時間がかかる.また,固有顔のような計算手法を用いる場合,次元数に比べ,サンプル数が少ないため,汎化能力が得られない.本研究で開発した,GND-PCAを用いると,わずか17個脳MRボリュームデータ(サンプル)からも脳の統計appearanceモデルを構築できた.Leave-one out法によるテスト実験では,構築した脳の統計appearanceモデルは十分な汎化能力があり,少数のパラメータで脳のボリューム画像を効率よく表現することができた.今後の医用画像データベース構築などへの応用が期待される.