各種高強度鋼の超広寿命域における回転曲げ疲労特性に関する研究

武田 光弘

近年,産業界における厳しい経済的背景の中で,広範な機械構造物が時には当初設定された設計寿命を超えるような長期間にわたって使用されてきた.また,機械構造物の高性能化・小形化を求める趨勢に起因してさまざまな高強度鋼が開発され,幅広く実用に供されてきた.通常,このような高強度鋼や表面硬化鋼はN=107回を超える長寿命域においてS-N曲線が再び低下するような特異な疲労特性を有している.したがって,機械構造物の長期安全性を保証するために,そのような長寿命域における材料の疲労特性が機械設計における重要な課題になってきている.

以上の観点から,本研究では以下のような高強度鋼についてN=0.5〜109にわたる超広寿命域における疲労試験を実施した.

高強度工具鋼 (SWRH62A, SVS, SRS60D)
高炭素クロム軸受鋼 (JIS:SUJ2)
ニッケルクロムモリブデン鋼 (JIS:SNCM439)

また,各試験片の破断面をSEMで観察するとともに,フラクトグラフィーの視点から考察を加えた.さらに,超広寿命疲労特性に及ぼす強度レベルの影響を明らかにするため,上記の高強度鋼と低強度の機械構造用炭素鋼(JIS:S35C)の疲労特性を相互に比較検討した.

その結果,高強度鋼に対する超広寿命域における特異な疲労特性が表面起点型破壊と内部起点型破壊に対する個別のS-N曲線の重ね合わせで与えられる「二重S-N特性」としてうまく説明できることが分かった.しかし,強度の低いS35C鋼のS-N特性はこのような様相を示すことはなく,表面起点型破壊のみに関する単一のS-N特性として与えられる.このように,内部起点型破壊は高強度鋼の超長寿命域における支配的な破壊形態である.この破壊形態に関するもう一つの発見は,表面に接する明瞭なFish-eyeが常に観察され,そのFish-eyeの中央に介在物が見られる事実である.最後に,介在物周辺の微小領域において細粒状領域(FGA)が形成され,この領域の生成過程が材料の疲労寿命を決める重要な役割を果たすことが明らかになった.