身分犯における正犯と共犯

佐川 友佳子

身分犯に複数人が関与する事例において、構成的身分犯の場合には、当該身分の効果 が非身分者にも及ぶとされる一方で、加減的身分犯の場合には、身分者にのみその身分 の効果が及ぶとされる。このように、現行刑法においては、構成的身分犯に関与した場 合と加減的身分犯に関与した場合とで、非身分者の立場からすれば、本来、不処罰とさ れる犯罪に関与した場合の方が重く処罰されるという矛盾が生じる。本研究は、このよ うな不合理を生じさせる規定が存在している根拠は何であるのか、そして、この問題を どう解釈すべきであるのかについて、歴史的経緯および理論的展開から、明らかにしよ うとしたものである。

日本の旧刑法においては加減的を個別化する規定が制定されることとなったが、これ は、各人はその者の罪責に応じて評価されるべきであるとする思考が反映されたもので あった。その後、現行刑法制定時に、構成的身分犯への共犯は正犯と同様に処罰される との規定が新たに創設されたが、これは構成的身分犯へ関与した非身分者を不処罰にと どめておくべきではないとの政策的理由から規定されたものであり、何らかの理論的基 盤に基づいたものではなかった。

ドイツでは、ライヒ刑法典以降、上述の刑のアンバランス問題が生じるにもかかわら ず、加減的身分の一身専属性が各草案においても一貫して維持された。また、その後、大戦後の刑法改正議論においても、限縮的正犯概念を前提とした上で、新たに構成的身分 犯への関与を可罰的としつつも、減軽を指示することによって、刑の不均衡問題を緩和 する規定が採用された。身分者にのみ侵害可能な領域が認められるという身分犯の特殊 性が明らかにされ、現在のドイツにおいては、義務犯論等から、身分犯への関与の問題 を基礎付けようとの試みがなされている。

また、オーストリアにおいては、ドイツのような主観的違法要素や人的不法論が極力 排除され、違法は外部的・客観的なものとして捉えられてきた経緯がある。そして現行 刑法においては、統一的正犯体系が採用され、違法は客観的に、責任は主観的に、とい うテーゼから、身分犯の問題も解決されるべきとして、身分犯への関与の規定も創設さ れたが、実際上は、その一貫性は疑わしいものである。

むしろ、ドイツのように、不法の相対化を認めることで適切な処罰範囲を定める方向 が適切であると考えられる。