ペーパーレス法理
――国債、社債、株式を中心に――

崔 香梅

近年有価証券のペーパーレス化は頻繁に議論されているが、そのほとんどは、証券決済の迅速化を図るために、有価証券の権利移転段階におけるペーパーレス化について議論されてきた。しかし、有価証券のペーパーレス化は、権利移転段階だけではなく、権利行使段階、権利発生段階にも行われることが考えられる。

有価証券のペーパーレス化の本質はいったいどのようなものなのか。現在は有価証券のペーパーレス化に関する統一的な定義はまだなされていない状況である。有価証券のペーパーレス化に関して、統一的に定義することができるのか、そして、統一的なペーパーレス法理は存在しているのか。本稿は、このような問題を解明するために、国債、社債、株式を対象に、歴史上における様々なペーパーレス化の現象を検討したうえで、統一的なペーパーレス法理を導くことを目的としてその前提作業を行ったものである。

結論として、国債、社債、株式のような有価証券について、権利の移転または行使のいずれかの段階で券面を要しないことをペーパーレス化と定義することができる。そして、ペーパーレス化は権利の流通を促進するものと促進しないものに区別することができるが、いずれも権利者の保護を図る必要がある。具体的には、証券市場における振替決済を中心とするペーパーレス化は、権利移転段階のペーパーレス化が主なものであるが、同時に権利行使段階でのペーパーレス化も実現している。これによって、権利流通の促進と静的安全性の保護を同時に図ることができる。他方、登録制度を利用した無記名証券を中心とするペーパーレス化は、権利行使段階でのペーパーレス化が実現しており、静的安全性の保護が図られている。また、登録制度を利用した無記名証券の権利移転段階でのペーパーレス化は、投下資本の回収を保障するために認めざるを得ないものであるが、適格な登録機関の存在を前提として、権利者の保護を図ることができる。このようなペーパーレス法理が成立するならば、非上場会社の株券不発行制度は、投下資本の回収を容易にするものではないし、権利者保護にも不十分な点が存在していると思われるため、ペーパーレス法理の適用対象とするに当たっては、その点に注意を要すると思われる。